仮想現実で出発進行、東急電鉄が運転体験システム
東京急行電鉄は2015年4月23日、仮想現実(VR)を使った電車の運転シミュレーターシステムを報道陣に公開した。利用者はゴーグル型のVR装置を装着。現実の運転席や車両内、周辺の環境を3次元(3D)コンピュータグラフィックス(CG)によって再現した仮想空間内で、電車の運転を体験できる。東急電鉄グループで独自に開発し、従来使用してきた大掛かりな運転シミュレーター装置に比べて、導入コストを3割、設置スペースを半分に節約できる。
同社の連結子会社で、車両の整備や電気設備工事などを手がける東急テクノシステムが開発した。システムには米オキュラスVRが開発・販売するヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)「オキュラスリフト」を採用。3D映像コンテンツを再生するパソコンと、ハンドルや計器類のついた運転台などからなる。
利用者がオキュラスリフトを装着してハンドルを操作すると、仮想空間内で電車が動く。ハンドルの倒し具合で速度が変わるほか、利用者が向いた方向に合わせて3D映像も動くため、あたかも運転席にいるかのような体験ができる。
従来の運転シミュレーター装置では、実物と同じ大きさの運転席を開発する必要があった。VRを使ったシミュレーターシステムは「省スペースと臨場感を兼ね備えた、体験型の教材」(東急テクノシステムの神尾純一取締役)として開発。設置床面積は2メートル四方と、従来装置の約半分にできたという。価格は4000万~1億4000万円程度で、従来装置に比べて3割抑えられるとしている。
CGを使うため、車両や運転環境を自由に変えられるのも利点だ。走行する路線を変えたり、見通しの効かない悪天候にしたりできる。計器類の表示もプログラムで本物と同じに再現しており、わざと故障を起こしてトラブル対応を体験させることも可能。
東急テクノシステムは東急電鉄をはじめとする鉄道会社に、運転士の訓練用途として売り込む。ゲームセンターなどで一般消費者が運転を体験できるといった娯楽用途の販売は想定していないというが「要望があれば考えたい」(神尾取締役)。5月2~4日には、東急田園都市線「たまプラーザ」駅にて開催するイベントで、一般向け体験コーナーを設ける。
(日経コンピュータ 玉置亮太)
[PConline 2015年4月24日掲載]
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