女優吉田日出子(70)が高次脳機能障害であることが27日、分かった。けがや病気で脳に損傷を負うと、記憶障害や注意障害などの症状が出て、普通に生活することが難しくなるもので、28日発売の著書「私の記憶が消えないうちに」(講談社)で明かした。

 吉田は07年に主演舞台を降板したが、以前からせりふが覚えられず、通い慣れた道に迷うこともあった。診断の結果、脳の前頭葉に傷が見つかり、高次脳機能障害と判明した。10年に復帰した代表作「上海バンスキング」の稽古場ではせりふや歌詞を忘れることもあったが、共演者がフォローした。本番も吉田ふんするまどかの分身役を設定し、プロンプターの声が聞き取れるように特製イヤホンをつけて演じきった。

 「ずっと隠しておこうと思った」と話す吉田だが、障害と付き合う中で「記憶障害も注意障害も、遂行機能障害も社会的行動障害も恥ずかしいことではない」と考えが変わったという。「障害や認知症を恐れているばかりではつまらないでしょう。障害や認知症のある、なしで境界線を引かずに、ありのままの自分、相手を受け入れてやっていきませんか」と話している。

 ◆高次脳機能障害

 脳梗塞(こうそく)、脳出血など脳の損傷によって引き起こされることの多い脳障害。症状は脳の損傷部位によって異なる。日付や人の名前を忘れてしまうなどの記憶障害、物事に集中できないなどの注意障害、計画が立てられないなどの遂行機能障害、感情のコントロールができにくくなる社会的行動障害などがある。