企業のIT部門で働いていると、報われない気持ちになるものです。普段は誰の目にもとまらない陰の存在で、問題が起きたときだけ注目され、非難にさらされます。今回は、IT部門について、きっとあなたが誤解している7つのポイントを解説します。これを読めば、もう少し、テクニカルサポートの人たちともうまくやっていけるようになるでしょう。

先日、米ライフハッカーの読者に、「あなたの仕事について周りの人に知ってもらいたいことは何ですか?」と質問しました。IT業界で働くたくさんの読者が回答を送ってくれました。その中には、システム管理者やテクニカルサポートの人たちもいます。今回は、そんな彼らの声もいくつか紹介します。(私はかつてIT管理者をしていましたが、今は違います。ですので、IT部門の秘密を存分に暴露するつもりです)

1. 私たちは魔法使いでもなければ、人の心を読めるわけでもない

おそらく、米ライフハッカーの読者のみなさんは、それぞれの家庭で、テクニカルサポートの役割をさせられていることと思います。そしてこんな経験があるのでは? 家族から、わけのわからないソフトウェアの、わけのわからない問題を突きつけられて、今すぐ直してくれと訴えられる... 企業内で起きていることもこれと同じです。違いは、企業のほうが何百倍も大変だということだけ。数十、あるいは数百の人から、ありとあらゆる問題が持ち込まれ、ただちに直すように要求されるのです。

弁護士は、すべての法律を理解しているわけではありません。そのかわり、卓越した調査能力とクリティカル・シンキングのスキルを駆使して、顧客の事案にアプローチします。それと同じく、IT部門の人たちも、問題解決の手法を駆使します。解決に必要な知識は、当事者(あなた)や知識データベース、これまでの経験、Googleなどから集めます。

つまり、あなたに求められているのは、少しばかりの忍耐と、起きている問題についてなるべく詳しく(そして正直に!)情報提供を行うことです。読者のecho125488さんはコメント欄にこう書いています。

私はソフトウェア企業のカスタマーサポート部門で働いていました。理解してもらいたかったのは、私はあなたを助けるためにいるわけであって、あなたの過ちを非難したいわけではないということです。だから、私が「何かシステムを変更しましたか?」と尋ねたときには、そのまま素直に答えて欲しいのです。あなたがなぜデータベースを削除したかなんて、私にはどうでもいいことです。あなたの上司に言いつけたりはしません。そもそもあなたの上司が誰かなんて知りませんしね。ただ、正直に、問題が起きたときのことを、できるだけ詳しく教えて欲しいだけなのです。私は超能力者ではありません。人の心も読めないし、そういうアプリも持っていません。

テクニカルサポートを何度も受けたことがあれば、いつも聞かれる質問があることに気づくでしょう。パソコンを再起動しましたか? デバイスを抜き差ししてみましたか? インターネットキャッシュを消去しましたか? 別のブラウザか、プライベートモードを試しましたか? などなど。こんどサポートを受けるときには、これまでにあなたが行った操作と、パソコンのスペックをメモに書き出しておきましょう。そうすれば、会話はかなりスムーズに進むはずです。

読者のOrangeGelloさんは、IT部門でできることには限界があるのだ、と訴えています。

Oracleのような企業が、Macに対応したソフトウェアを出してくれないとしても、私たちに向かって、MacでOracleを動かすにはどうすればいいかと尋ねないでください。みんなと同じく、素直にWindowsを使ってください。

現在は、職場であらゆる機器が使えるようになるべきだ、という期待があります。(それも発売された直後から!)しかし、IT部門にとって、あらゆる社員のあらゆるデバイスをすべてサポートするのは、簡単ではないことを理解して欲しいのです。

2. 個人所有のパソコンを直してくれと頼まないでほしい

私がIT部門で働いていたとき、毎週のように、同僚や上司から、個人所有のパソコンやスマートフォンを直してほしいと頼まれたものです。ときには、彼らの友人や家族の所有物まで...

ときどき、ピザをおごるよとか、少しお小遣いをあげると申し出てくれる人もいましたが、そうだとしても、IT部門の人間に個人所有のデバイスの修理を頼むのは、適切なこととは思えません。それは、経理部門で働いている同僚に、個人的な税金の処理を頼むとか、人事部門の人に、履歴書の添削を頼むのと同じようなことです。

もっとも、副業でパソコンの修理をやっている同僚に、仕事として依頼するなら話は別です。そうでないなら、メーカーや社外のテクニカルサポートに頼むのが筋というものです。

3. 新しい技術の導入に慎重なのはわけがある

IT部門はよく、時代遅れなことをしていると揶揄にされることがあります。例えば、サポートが終了したWindows XPを使い続けたりするからです。

少し前に、とある中小企業の重役が、自分の会社は、eBayであるPDAを見つけると、全部買い占めるのだと話してくれました(おそらく機種はPalm Pilot)。その理由は、会社の業務にとって必要不可欠な、独自開発のソフトウェアが、そのPDAでしか動かないからです。つまり、その会社は、新しいプラットフォームへの移行にお金を使うよりも、衰退したテクノロジーを使い続けることを選んでいるのです。

これは少し極端な例ですが、似たような話はどこにでもあるはず。ブログ「Big Men Content」は、この問題のおもな要因は、組織の硬直化にあると言っています。

いちどプロセスが定まると、それを変えるには多大な労力が必要となります。単純に、現行システムを管理している人たちは、現状を維持したがるものだからです。

そこには、自分たちの仕事や縄張りを守ろうとする心理が間違いなくありますが、新しいテクノロジーの導入に関して言えば、IT部門は必要以上に責められている気がします。問題の核心は、ITに関してでさえ、何かを変えると、結局は仕事が余計に増えてしまうという根強い思いがあることです。おそらく誰もが、過去に、仕事のやり方を大きく変えて、散々な目にあった経験があるからでしょう。

「壊れていないものを直すな」というメンタリティーは、システムの変更を嫌がるIT部門だけの専売特許ではありません。エンドユーザーや、財布のひもを握っている人たちも、変化や、使い方を学び直すのを嫌がるものです。Microsoft Officeのリボンへの抵抗を覚えていますか?

ですので、あなたの会社のウェブサイトが、JavaがインストールされたInternet Explorerでしか見られないのだとしても、IT部門をあまり責めないでやってください。

4. 私たちは、あなたがコンピューターの素人であると前おきしなければならない

私も、みなさんと同じく、テクニカルサポートに電話して、こんなやりとりをさせられるとイライラしてしまいます。

CS:画面が真っ白で、水平のラインだけが見えるわけですね?

私 :そうです、グレーのラインが見えます。

CS:そのラインはグレーですか?

私 :ええ、いま言ったとおりです。太い、点線のラインが4本、画面の下の方に見えます。

CS:わかりました。そのラインは点線ですか? 実線ですか?

私 :(はあ...)

テクニカルサポートに電話して、同じことを何度も質問され、マニュアル通りに会話を進められると、時間を浪費させられている気がして腹が立ってきます。とはいえ、こうした画一的なやり方をするのは、見落としがないようにするためでもあります。また、通話内容はたいてい「品質向上のために録音されて」います。サポート担当者としても、お互いに不快だとわかっていても、マニュアル通りにやらざるを得ない面もあるのです。

どちらの立場にも立ったことがある私からすると、いくらエンドユーザが初心者であることを想定しなければならないのだとしても、テクニカルサポート側も、もう少し相手を尊重したやり方ができるはずだと思います。

5. ITポリシーは、自分たちで勝手に決めてるわけじゃない

2段階認証をオンにしなさい。出張先ではVPNを利用しなさい。パスワードを強固なものに変えなさい...。なにも、IT部門はあなたを苦しめたいわけではありません。これらはすべて、お互いを守るためのベストプラクティスなのです。

一部の業界では、データ侵害などの重大な影響から人びとを守るよう、法的な義務が課せられています。たとえ法律で求められていなくとも、基本的にこうしたITポリシーは、私たちみんなを守るためにあるのです。

6. あなたが何をしているかはすべて筒抜け

はっきりと明示されていなくとも、あなたは常に監視されています。会社のパソコンを個人的なことに使わないように。

7. あなたと同じく、私たちも不満なんです

私たちだって、すべてのポリシーに賛成しているわけではありません。パスワードをどれくらいの頻度で変えさせるのか、どのプログラムを使わせるべきなのか、など。「違う」と思いながらも、エンドユーザーに強要せざるをえない面があるのです。私たちが扱っているすべてのソフトウェア、ハードウェアは、いつでも破壊的な損害をもたらす可能性を秘めています。

あなたのことが嫌いなわけではありません。しかし、IT部門とほかの部署は、どうしても対立してしまう関係であるのは事実です。ブログ「Big Men on Content」は次のように説明しています。

あなたはルールを破って、それをIT部門のせいにします。(中略) IT部門には、データの完全性を保持する責任があります。そのために、あらゆる策を講じます。その一環として、あなたにさまざまな行為を禁止します。あなたは、こうした規制を迂回しようとします。あなたが規則を破ったせいで、データが流出したり、システムに障害が起きたりしたら、その責任はITマネージャーが被ります。政治的あるいはキャリア的に、大きな代償を払うはめになるのです。

なにも、IT部門は悪くないとか、改善の必要はないと言っているわけではありません。たとえ「あなた vs. 私たち」という対決の構図に見えたとしても、実際、両者は同じ側にいるのだと言いたいのです。

私たちはみな、物事がうまくいくことを願っています。そして、できれば、必要がない限り、お互いに話をしなくてすめばいいなあ、と思っているのです。

Melanie Pinola(原文/訳:伊藤貴之)

Illustration by Tina Mailhot-Roberge.