修習に際して読むと良い(らしい)本をとりあえずリストアップしてみます。
他の本があったら教えて下さい。なお、この記事はこの本を読むべき、というのではなく、単純に、備忘録としてリストアップしたにとどまります。参考になれば幸いです。
私が読んだことのある本に関しては、メモ程度の感想を書いています。

改訂情報を反映し、民事事実認定につき、論文を2本追記しました(1月29日)。
『50選』民事バージョンが出ましたので追記しました。詳しい感想は後日ということで。あと、事実認定の研修所説につき、「事例で考える」の部分に追記しました(3月24日)。



【民裁・要件事実】

法曹會『新問題研究 要件事実』
法曹会『改訂 紛争類型別の要件事実』

→とりあえず持っておきましょう的な。なお、類型別は白表紙中にはありません。もしかしたら、司法研修所はもはや細かすぎる要件事実論には重きを置いていないということなのかもしれません。




『事実摘示記載例集』(白表紙又は民事判決起案の手引巻末)

→これはロー生その他にも勧めたいです。要件事実を、ブロックダイアグラムではなく、「事実摘示」の形で記載する際の、一つのお手本が書いてあります。5W1Hの書く順番とか、気になる人は是非。書く順番を固めてしまうと、結構楽になると思います。





大島眞一『完全講義 民事裁判実務の基礎〈上巻〉

→言わずと知れた大島本。上巻は、要件事実の総論と各論。下記『要件事実マニュアル』に比べると、網羅性、検索性には劣りますが、学習者目線に立った説明や、各所に挿入されるコラムは勉強になります。





岡口基一『要件事実マニュアル 第1巻(第4版)総論・民法1』『要件事実マニュアル 第2巻(第4版)民法2

→圧倒的なシェアを誇る要件事実最強の辞書。最近、学生にもユーザーが増えてきている模様です。基本的に条文に沿って書かれているため、その網羅性と検索性は他の追随を許しません。あと、はしがきにもあるとおり、文献を探す際も大活躍しそうです。本書をまず見て、それから他の文献に飛ぶ、という使い方を主にしています。今のところは、1,2巻だけで足りるのではないかなと考えていますが、どうなのでしょうか。





村田=山野目『要件事実論30講 第3版

→要件事実の演習書としては、まずこれを。総論、各論とバランス良く記述があります。演習問題は、基本的には、「言い分」から要件事実を組み立てる形式。学習者に配慮した記述が多く、多少難しい解説もありますが、やると確実に実力がつく一冊だと思います。
 なお、本書中の参考解答例は「要件事実論」として(言い換えると試験問題に対する「解答」として)厳密なものではなく、(おそらく)実務的な記載が書かれていることに注意。必ずしもミニマムの原則等に則って書かれてはいないものがあります。





岡口基一『要件事実問題集

→岡口判事2冊目です。上記『30講』が、要件事実を学ぼうとする学生、主に学部~ロースクール生を対象に書かれているのに対して、本書は、要件事実論を一通り学び終え、実際に試験で「書く」必要のある、修習生を主な対象として書かれています。
 要件事実の「総論」は一切無く、ただ、演習問題が20問並んでいるだけの、とてもストレートな問題集です。問題形式も、「言い分」から要件事実を組み立てるものだけではなく、実際の主張書面(訴状、答弁書、第一準備書面、等々)だけを読んで要件事実を組み立てる形式まであり、まさに「試験対策」という感じが出ています。
 本書の良いところは、出題形式や、参考解答例、その解説が、試験に必要十分な形で書かれているというところだと思います。無駄な記載は一切ありません。とても、密度の濃い問題集だと思います。





【民裁・民事事実認定】

『事例で考える民事事実認定』

→白表紙、又は法曹會から出版されています。様々読みましたが、まずはこの本から読むべきかなと今は思っています。事実認定のプロセスを、明確な形で言語化し、(語弊を恐れずに言えば)ある種「マニュアル化」しようとしており、事実認定についてよく知らない私たちからすれば、本書のようにまず「型」を身につけさせてくれるのはとてもありがたいです。本書を読んで、まず骨子を掴む感じが良いのかなと思っています。

 ちなみに、本書によって、現在の司法研修所が、下記『ステップアップ』『民事訴訟における事実認定』とは若干異なる立場を取っていることがわかります。「類型的信用文書」を使った4類型の採用のほか、具体的には、処分証書の定義が変わりました(「記載されているもの」から「よってなされたもの」へ。)。実質的に考えていることは何も変わっていませんが、枠組みは変わりますね。本書と、下記2冊を並行して読まれる方はお気をつけください。






土屋文昭ほか『ステップアップ民事事実認定

→研修所教官らによる、民事事実認定の入門書です。曰く、下記『民事訴訟における事実認定』の簡易版を作りたかったとのこと。「座談会」→総論→演習問題→「座談会」という構成になっています。全体的に記述は大変平易に書かれており、行間を読ませないようにしている印象を受けます。学生が陥りやすいミスの指摘も多く、読んでいて大変勉強になります。
 演習問題については、上記『事例で考える』のような、記録をまず読んでから考えさせる問題とは異なり、「言い分」をまず読み、「争点」を見つけ、次に争点の解決のためにどのような「証拠」が必要か?という順番で思考させるタイプの問題です。演習問題の解説は若干散漫な印象もあって、思考順序を明確に示す上記『事例で考える』の明晰さには劣りますが、その分、新しい発見も多くあります。『事例で考える』の次に読むと、学習上効率が良いかなと思います。
 大変読みやすいので、ロースクール生が読んでも全く問題がないと思います。





法曹會『民事訴訟における事実認定』

→司法研修所の英知を結集した一冊です(大げさ)。内容は大変に高度で、かなり難しいのですが、問題を検討していてこれを開くと、突破口が発見できるような気がします。最終的には、本書を読み込みたいと思っています。巻末にある裁判官へのインタビューも、貴重な資料のようです。





伊藤=加藤『〈判例から学ぶ〉民事事実認定 (ジュリスト増刊)

→事実認定に関する書籍を読んでいると、参考文献としてよく挙げられている一冊です。民事事実認定版の百選という感じ。気になるときに開く程度で今はいいかなと思っています。





大島眞一『完全講義 民事裁判実務の基礎〈下巻〉

→下巻は事実認定と、要件事実+事実認定の演習問題が掲載されています。





加藤新太郎『民事事実認定と立証活動 第I巻』『民事事実認定と立証活動 第II巻

→判例タイムズ連載の書籍化。この本も、参考文献としてよく挙がっています。どちらかといえば民事弁護の方が読むのかも知れません。「書証」「人証」などについて、より詳しく載っています。





後藤勇『民事裁判における経験則―その実証的研究





ついでに、論文を書き留めておきます。



土屋文昭「事実認定再考【民事裁判の実態から】」
(自由と正義48巻8号(1997年8月号)72頁)

→筆者は前記『ステップアップ民事事実認定』の編者で、元司法研修所教官、裁判官、現東京大学教授。2015年2月に『民事裁判過程論』を出版するようです。
10数頁の短めの論考だが、民事裁判官の考える事実認定の大きな枠組みや注意点など、ある意味裁判官の「常識」的なところを丁寧に説明してくれており、わかりやすい論考です。書いてあることは『ステップアップ』などと変わらないのですが、良い論文だと思います。




村田渉「推認による事実認定例と問題点―民事事実認定論の整理と展開に関する一試論―」
(判例タイムズ1213号42頁)


→筆者は『30講』など、多数の著作を書かれている有名な裁判官ですね。
本論文は25頁と、長めです。事件類型ごとに裁判例を分け、類型ごとに注目すべき間接事実を分析しています。上の土屋論文よりは難しめですが、詳しく事実認定を勉強しようと思ったら、事件類型ごとの着眼点が書いてある本論考は結構参考になるかもしれません。





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奥田隆文=難波孝一[編]『民事事実認定重要判決50選

出版社リンク

→『50選』の民事事実認定バージョンが,ついに出版されました。刑事は2冊組になっていますが,民事は1冊です。その代わり,8000円近い価格になっています。
 これからの基本文献になるでしょうか。これが高すぎて買えない人は伊藤=加藤編のジュリストでも足りるような気はします。
 詳しい感想は,もう少し読み込んでから書き加えようかと思います。とりあえず今は紹介だけということで。




【民裁・争点整理】


林道晴ほか『ライブ争点整理

→最近出版された本。裁判官と弁護士との共著です。4つの事件について、主に弁論準備手続の中で、それぞれの当事者がどのように考え、どのように争点整理がなされていくか、を詳しく描いています。割と面白いです。折に触れて読み返したいなと思っています。





【民裁・手続】

『民事訴訟第一審手続の解説』

→若干具体的な事件に寄りすぎているかなあという感じはします。





加藤新太郎ほか『民事訴訟実務の基礎

→民事訴訟の手続を記録と共に学ぶのであれば、上記『第一審手続の解説』よりは、本書の方が良いと思います。記録もそれなりに長く、ブロックダイアグラムも付いており、かつ、民事保全、執行までカバーされています。
 なお、予備試験の口述対策として良いという噂もあります。





岡口基一『民事訴訟マニュアル上-書式のポイントと実務-』『民事訴訟マニュアル下-書式のポイントと実務-

→岡口判事、3冊目です。民事訴訟をするにおいて、必要な書式が、注意点と共に書いてあります。民裁というよりはこれも民弁の方が使うかもしれません。





【民裁・その他】

『民事判決起案の手引』



田中豊『法律文書作成の基本  Legal Reasoning and Legal Writing

→元調査官、現慶應義塾大学教授の本です。これも民裁というよりは民弁向きかもしれませんが、法律相談から、訴状作成、民事判決起案、契約まで、法律文書を作成する際の注意点などが丁寧に書かれています。いきなり「起案しなさい」と言われても何も分からないので、本書の有用性は高いのではないかなと思っています。





【民弁・総論的】


京野哲也『クロスレファレンス民事実務講義 第2版

→第2版が出ました。初版から比べ、かなりバージョンアップされている模様です。民事弁護をやるために必要なことや注意すべき事が、受任から終了まで、網羅的に書かれています。とりあえず本書を片手に色々なことをすることになりそうです。なお、著者は自身のTwitterで本書に関することを呟かれています。@bye02661(著者のTwitterアカウント)





圓道至剛『若手弁護士のための民事裁判実務の留意点

→元裁判官、現弁護士である圓道先生の本です。民事裁判に限ってですが、基本的なことや、良くあるミスなどを引き合いに出しながら、わかりやすく手続きの解説がなされています。上記『CR民事実務講義』と合わせて、手放せない本になりそうです。
  そういえば、新日本法規の書籍って、Amazonだと取り扱いが薄いのでしょうか。普通に書店にはあるので、探してみてください。




田中豊『法律文書作成の基本』
岡口基一『民事訴訟マニュアル』

→やはり民弁でも必要かなと思っています。





【民弁・尋問、和解など】


加藤新太郎『民事尋問技術(第3版)



小林秀之ほか『交渉の作法 法交渉学入門

→有名な『ハーバード流交渉術』(原題:Getting to Yes)などを意識しながら、「交渉」というものを、体系的に、学問的な裏付けを持って、「術」ではなく、「学」として考察した一冊。主に心理学などに依拠しながら、交渉の仕方について解説しています。読みやすく、かつ面白いので、時間が空いたときなどに読んでみると良いと思います。アメリカのロースクール的な本ですね。





草野芳郎『和解技術論―和解の基本原理 (信山社・法学の泉)


法曹會『書記官事務を中心とした和解条項に関する実証的研究』

→和解について勉強する際は必須とのこと。現在改訂版が出ているのですが、人によっては、初版の方を評価する人もいます。初版の方が内容が厚かったようです。


司法協会『民事実務講義案』


→民事裁判手続を学ぶ際に何かと役に立つ本です。